Shopifyテーマ開発におけるカートAPI選定のポイント~Storefront APIとAjax Cart APIの実装比較と最適な選択~
Shopifyテーマ開発におけるカートAPI選定のポイント~Storefront APIとAjax Cart APIの実装比較と最適な選択~

目次
- はじめに
- 1. ShopifyのカートAPI:概観
- Ajax Cart APIとは
- Storefront APIとは
- 2. 両APIの選定基準と実装比較
- Ajax Cart APIが適しているケース
- Storefront APIが必要となるケース
- 比較表
- 3. 実際の運用現場での「カゴ落ちメール」とAPIの関係
- 4. Ajax Cart APIの実装例と運用の注意点
- 実装サンプル
- 運用のポイント
- 5. Storefront APIを活用する際の業務上のポイント
- 主なポイント
- 6. 事例と今後の展望
- 事例:某国内ブランドのShopifyストア新規立ち上げ
- 今後のShopifyテーマ運営・API選定について
- 7. よくあるご質問・FAQ
- Q: 実装経験が少なくてもAjax Cart APIで安全にカート機能が作れますか?
- Q: Storefront APIはAPI制限にかかりますか?
- 8. おわりに
- 9. 参考情報・公式ドキュメント
はじめに
こんにちは、いつも記事を読んで頂きましてありがとうございます!
日々、ECコンサルとしてEC事業者様の運営をご支援する立場から「実際に現場で使われている情報」をシェアしています。
Shopifyがグローバルに広がる中、国内市場においてもShopifyを活用したECサイト構築は増加の一途をたどっています。筆者にも「既存の海外ブランドECサイトを日本向けにShopifyで再構築したい」「予算や運用面を考慮し標準テーマで堅実に立ち上げたい」といったご相談が増えています。
このような条件の中で、「Shopify標準テーマDawnを採用してストアを構築し、カート投入機能(Add to Cart)をどのAPIで実装するのが最適か?」といった技術選定の課題が発生します。
現場ではAjax Cart APIの利用が定着していますが、一方でStorefront APIという選択肢もあります。それぞれのAPIを比較し、実装と運用の観点から最適な選択について整理いたします。
1. ShopifyのカートAPI:概観
Ajax Cart APIとは
Ajax Cart APIは、ShopifyのOnline Store(Liquidテーマ)で利用できるRESTベースのAPI群です。 サイト上の「カート追加ボタン」や「カート編集」などのフロントエンド操作を、jQueryやfetch経由のJavaScriptで手軽に実装できます。 主にShopify標準テーマや、その拡張開発(カスタムLiquidテーマ)で用いられています。
主な特長
- Shopify標準のカートUIやテーマ機能と自然に連携
- ショップ管理画面やテーマエディタとの互換性が高い
- 実装が比較的シンプル
制約
- ヘッドレスコマースや外部システムでは利用不可
- 将来的なAPI拡張や複雑な体験設計は困難
Storefront APIとは
Storefront APIは、Shopifyが提供するGraphQLベースのAPIであり、カートや商品データの取得・操作をOnline Store以外からも可能にします。 主に下記のような要件・環境で利用されています。
主な特長
- Headlessコマース(React/Next.js/Vue等)や独自フロントエンドで利用可能
- カスタムモバイルアプリやマルチチャネル連携など、Shopifyテーマ外への拡張性が高い
- フロントエンドの設計や顧客体験を柔軟にコントロールできる
制約
- 実装にはGraphQLの知識やAPIトークン管理、認証設計が必要
- ShopifyプランやAPI利用回数制限によって、使用条件が異なる
ちなみに筆者自身はフロントエンド開発ではStorefrontAPIを用いて最短経路での購入を実現しCVRを最大化させてEC事業者様に喜んでもらうことが好きな傾向があるので下記のようにStorefrontAPI関連の記事を書くことが好きです。余談です。
2. 両APIの選定基準と実装比較
Shopifyテーマ(Dawn等)を用いたストアの新規構築、かつ限られた予算・運用コストを考慮する場合、どちらを選択するべきでしょうか。
今回筆者が請け負ったケース
Ajax Cart APIが適しているケース
- Shopify標準テーマ、またはLIquidベースのテーマ拡張開発に限定した運用
- 短期間、低コストでの導入・運用を重視する場合
- カゴ落ちメール(Abandoned Cartメール)等、Shopify標準機能の活用が必要
- 将来的に外部チャネルとの大規模連携を想定しない場合
Storefront APIが必要となるケース
- Headless構成(React/Next.js等)や独自設計のリッチなフロントエンドに移行するプロジェクト
- 外部アプリ、POS連携等、多チャネル・マルチプラットフォーム対応を強化したい場合
- 今後の柔軟な機能拡張やサードパーティ連携を見越して構築したい場合
比較表
3. 実際の運用現場での「カゴ落ちメール」とAPIの関係
Shopify運営者なら、「カゴ落ちメールってきちんとお客さんに届いてる?」と不安に思うこともありますよね。集客や売上アップの重要な施策の一つでもあるこのカゴ落ちメール、実はカートまわりの実装方法(使うAPI)によって挙動が変わります。
Shopifyのカゴ落ちメール、発火タイミングは2種類
Shopify標準のカゴ落ちメールが送信されるタイミング(トリガー)は、主に以下の2パターンです。
①「Customer left online store without making a purchase」
- 概要:商品をカートに追加したものの、チェックアウトへ進まずサイトを離脱した場合。
- Ajax Cart API利用時:カゴ落ちメールがきちんと送信されます。カートに商品追加後、ユーザーがページを閉じた場合もOKです。
- Storefront API(ヘッドレス構成)利用時:このトリガーによるカゴ落ちメールは送信されません。Shopifyシステムの仕様によるため注意が必要です。
→「カート追加時にメールを飛ばしたい」ならAjax Cart API一択、というのが現状です。
②「Customer abandons checkout」
- 概要:カート内商品を持ったままチェックアウトページまで進み、連絡先(メールアドレス等)を入力した後に離脱した場合。
- Ajax Cart API/Storefront API共通:どちらの場合も、16~17分後にカゴ落ちメールが自動送信されます。
4. Ajax Cart APIの実装例と運用の注意点
実装サンプル
Ajax Cart APIを用いたカート追加の基本例は、下記のようなシンプルなJavaScriptで実現可能です。
fetch('/cart/add.js', {
method: 'POST',
headers: {
'Content-Type': 'application/json'
},
body: JSON.stringify({
items: [
{
id: VARIANT_ID,
quantity: 1
}
]
})
})
.then(response => response.json())
.then(data => {
// カート追加後の画面処理
});copy
このような書き方で、最小工数かつShopifyのバックエンドと同期したカート操作ができます。テーマ側で用意されているカートアイコンや、サイドカートの開閉、ミニカートのデータ同期までスムーズに実装可能です。
運用のポイント
- テーマのアップデート Shopify標準テーマ(Dawn等)は定期的にアップデートされるため、Ajax Cart APIを利用するカスタマイズを加える場合も、Shopifyが公式に推奨するJavaScriptの書き方やイベント管理に沿うことが重要です。
- アクセシビリティ配慮 Ajax Cart APIを利用した非同期操作の場合、ページ遷移を伴わないUXが増えます。そのため、スクリーンリーダーやキーボード操作にも十分対応したフィードバック設計が求められます。
- SEOやページ速度 Ajax経由の動作が増えた場合も、SSR(サーバーサイドレンダリング)と組み合わせて初期表示速度を維持する等、全体のパフォーマンス設計に注意を払います。
5. Storefront APIを活用する際の業務上のポイント
Storefront APIの優位性は全て「自由度の高さ」にあります。その一方で、国内ShopifyテーマストアでStorefront APIのみを軸に開発する場合には従うべき運用ポリシーや設計ポイントがあります。
主なポイント
- アクセストークンとセキュリティ管理 :Storefront APIは公開アクセストークンで操作できますが、悪用された場合のレートリミットや商品情報の漏洩を防ぐ運用設計が不可欠です。
- データ連携・マルチチャネル通信 :ヘッドレス開発で各種オウンドメディアやアプリ、会員制サービスと連携するためのインフラ基盤を整備する必要があります。
- Shopifyアップデートへの追随 :Storefront APIはGraphQLスキーマやエンドポイントのアップデート頻度が高く、CI/CDや自動テスト体制の整備が欠かせません。
6. 事例と今後の展望
事例:某国内ブランドのShopifyストア新規立ち上げ
筆者が支援している某ブランド案件では、次のようなステップでAPI仕様を選定しました。
- 要件整理
- 短期納期を最優先
- テーマは標準Dawnをカスタマイズ
- 在庫連携や受注処理はShopify管理画面メイン
- 中長期ではInstagram Commerceや外部モール連携も検討
- システム設計
- カートはAjax Cart APIで実装、カゴ落ちメール・豊富なテーマカスタマイズを活用
- 一部独自UIや特設LPのみ、Storefront APIを「補助的に」部分利用
- マーケティング担当部門が継続的にテーマエディタやストア設定を行えるように
このような設計方針により、「運用負荷を最小化」しつつ「将来的な拡張路線も検討しやすい」体制を構築しています。
今後のShopifyテーマ運営・API選定について
- Shopifyテーマ主導での運用が国内では依然として主流
- コストと運用性を両立した体制が企業・ブランドにとって最適解となりやすい
- 拡張性・外部連携のための技術調査・スモールスタート
- 今後は、モバイルアプリや外部システム連携への段階的移行を見据えた、ミドルAPI活用のリサーチも重要に
- 継続的なAPI方針の見直し
- ShopifyのエコシステムやAPI推奨方針は変化するため、定期的に実装方式・API利用方針の見直しを実施することが推奨されます
7. よくあるご質問・FAQ
Q: 実装経験が少なくてもAjax Cart APIで安全にカート機能が作れますか?
A: Shopify公式テーマに準拠し、ドキュメント記載の方式で開発を行えば、十分に安全かつ安定したカート機能が構築可能です。APIのバリデーションやセキュリティ要件にも配慮してください。
Q: Storefront APIはAPI制限にかかりますか?
A: ストアのプランに応じてAPIクエリのレートリミットが存在します。高トラフィック時は工夫が必要な場合もあるため、初期開発段階で公式レートリミットポリシーを確認のうえ設計することが推奨されます。
8. おわりに
Shopifyストアのカート機能実装は、「予算」「運用体制」「今後求められる拡張性」など多角的な視点から最適な技術選定を行う必要があります。 現時点では、標準テーマを活用する国内向けストアにはAjax Cart APIがコスト・運用性両面で最適解となりますが、将来的なマーケット展開やユーザー体験の進化を見据えれば、Storefront APIの可能性も常に検討対象とすべきです。
企業としても、この変化の早いECプラットフォームの中で、「今なぜこのAPIを選ぶのか」を明確なロジックに基づき判断し、ストアの成長戦略へとつなげていくべきでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

